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内容紹介
Webアプリケーションやスマートフォンが広く使われる現在、世界中で使われるソフトウェアを開発・配布するための障壁は薄まりつつあります。しかしながら、多くの人たちに使ってもらうには、さまざまな言語や文化に対応した、グローバルなソフトウェアを開発しなければなりません。
本書はソフトウェア開発におけるグローバリゼーション(Globalization, G11N)についての本です。グローバルなソフトウェアはどのようなものであるか、その概要と開発プロセスについて触れた後、二つの大きな分類である国際化(I18N)と地域化(L10N)について、それぞれ詳しく解説します。
本書は、世界のユーザーに使ってもらえるソフトウェア(スマホやウェブのアプリなど)を作るプロセスや方法について解説しています。グローバルなソフトウェアができあがるまでには、企画、設計、プログラミング、翻訳、テストといったステップを経ます。ソフトウェアの完成後にはマーケティング、配布(販売)、サポートなども必要になるでしょう。それらの中でも本書は、プログラミングや翻訳など実際の制作部分を中心に扱っています。つまりタイトルにもある「I18N」(インターナショナリゼーション)と「L10N」(ローカリゼーション)、2つを合わせて「G11N」(グローバリゼーション)です。読者として想定しているのは、プログラマー、翻訳者、デザイナー、テクニカル・ライター、プロジェクト・マネージャーとして現在働いている人たち、またこれからG11Nを学びたい人たちです。
詳しくは第1章「グローバルなソフトウェアとは」で扱いますが、最近までI18NとL10Nは分業されることがほとんどでした。主に前者はプログラマー、後者は翻訳者が担当します。L10Nは外注されることが多く、プログラマーと翻訳者との間の意思疎通はほぼなかったと言えるでしょう。ただし近年のアジャイル開発の普及などにより、従来のような分業では円滑に行かないケースが増えています。そこで本書ではI18NとL10Nを一連のプロセスと捉え、1冊にまとまった形で解説することにしました。
本書では基礎的な概念の理解促進に力を入れています。特定のプラットフォームにおけるI18N手法や特定の翻訳支援ツールの使い方といった「ハウツー」は確かに即座に役立つのですが、時間が経てば変化してしまいます。特に情報技術のように日進月歩の分野ではすぐに陳腐化してしまう可能性があるでしょう。本書は時が経っても古くならず、容易に応用が可能な基礎的知識を身に付けられるようにしてあります。ただしその際、抽象的な解説に終始するのではなく、具体例を見せつつ分かりやすく説明していきます。そのためにデモ用のソフトウェアを独自に開発し、ダウンロードして利用していただけるようにしてあります。
(「はじめに」より)
書誌情報
- 著者: 西野竜太郎
- 発行日: 2017-07-07
- 最終更新日: 2017-12-08
- バージョン: 1.0.0
- ページ数: 153ページ(PDF版換算)
- 対応フォーマット: PDF, EPUB
- 出版社: 達人出版会
対象読者
グローバルなソフトウェアの制作方法を習得したいプログラマー、翻訳者、デザイナー、テクニカル・ライター、プロジェクト・マネージャーなど。
著者について
西野竜太郎
IT分野の英語翻訳者。合同会社グローバリゼーションデザイン研究所代表社員。
米国留学を経て国内の大学を卒業後、2002年からフリーランスの翻訳者とソフトウェア開発者に。2016年に合同会社グローバリゼーションデザイン研究所を設立。著書『アプリケーションをつくる英語』(2012年、達人出版会/インプレス)で第4回ブクログ大賞(電子書籍部門)を受賞。産業技術大学院大学修了(情報システム学修士)。東京工業大学博士課程単位取得退学。長野県生まれ、愛知県育ちで、趣味はアニメーション鑑賞。
Twitterアカウント: @nishinos
個人ブログ: http://blog.nishinos.com/
企業サイト:http://globalization.co.jp/
目次
はじめに
第1章 グローバルなソフトウェアとは
- 1.1 グローバルなソフトウェアの特徴
- 1.2 グローバルなソフトウェアの例
- 1.2.1 多言語での表示
- 1.2.2 ロケールに合った形での表示
- 1.3 グローバルなソフトウェアを開発しよう
- 1.4 本章のまとめ
第2章 I18NとL10Nの概要と開発プロセス
- 2.1 I18NとL10Nの概要
- 2.1.1 定義
- 2.1.2 I18NとL10Nの関係
- 2.1.3 G11N意識の欠如が招く不幸
- 2.2 ロケールとは
- 2.3 グローバルなソフトウェア開発のプロセス
- 2.4 開発プロセスの変化
- 2.4.1 L10N業務の分離
- 2.4.2 アジャイル型の普及
- 2.4.3 L10Nはどうアジャイルに対応するか
- 2.4.4 本書で想定するプロセス
- 2.5 設計で考慮すべき点
- 2.5.1 どこ向けか
- 2.5.2 どの程度か
- 2.5.3 何が対象か
- 2.5.4 何を使うか
- 2.6 本章のまとめ
第3章 I18N
- 3.1 I18Nの実装内容
- 3.2 文字と書字方向
- 3.2.1 Unicodeを使う
- 3.2.2 異なる方向に書く言語に対応する
- 3.3 L10Nの分業化と自動化
- 3.3.1 リソースを外部化する
- 3.3.2 ロケールに合う形式で自動的に表示させる
- 3.4 訳文の質向上
- 3.4.1 翻訳可能な単位にまとめる
- 3.4.2 条件に応じて異なる訳文を選択可能にする
- 3.4.3 翻訳を意識したGUI設計をする
- 3.4.4 翻訳を意識した原文テキストを書く
- 3.4.5 ロケール依存の要素を汎用化する
- 3.5 I18Nのテスト
- 3.6 本章のまとめ
第4章 L10N
- 4.1 L10Nの対象
- 4.1.1 テキスト
- 4.1.2 画像、ビデオ、オーディオ
- 4.1.3 文化的要素
- 4.1.4 機能とハードウェア
- 4.2 L10Nのプロセス
- 4.2.1 基礎的な3ステップ
- 4.2.2 アウトソーシング・モデル
- 4.2.3 内製モデル
- 4.2.4 クラウドソーシング・モデル
- 4.3 L10Nのツール
- 4.3.1 翻訳作業環境
- 4.3.2 TMS(GMS)
- 4.3.3 抽出/統合支援ツール
- 4.3.4 ツールで用いるファイル形式
- 4.4 翻訳者に提供する情報
- 4.4.1 テキストの全般情報
- 4.4.2 翻訳の対象と対象外
- 4.4.3 分脈が分かる資料
- 4.4.4 翻訳メモリー
- 4.4.5 用語集
- 4.4.6 スタイルガイド
- 4.5 翻訳者に求められるスキルと知識
- 4.6 翻訳の品質評価
- 4.6.1 客観指標による評価
- 4.6.2 言語専門家による主観評価
- 4.6.3 ユーザーによる主観評価
- 4.6.4 どの評価方法を用いるか
- 4.6.5 エラー評価の実施例
- 4.7 L10Nのテスト
- 4.8 L10Nのフロー例
- 4.9 本章のまとめ
付録A デモ用ソフトウェアの活用
- A.1 デモ用ソフトウェアの入手
- A.2 デモ用ソフトウェアの基本動作
- A.2.1 経費記録アプリケーションとしての動作
- A.2.2 多言語での表示
- A.2.3 ロケールに合った形での表示
- A.3 I18NとL10Nの実装部分確認
- A.3.1 I18Nの実装部分の確認
- A.3.2 L10Nの実装部分の確認
- A.4 L10Nの練習
- A.4.1 UIテキストの翻訳
- A.4.2 ヘルプの翻訳
付録B さらに知りたい人のために
- B.1 I18N
- B.2 L10N