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内容紹介
認知科学は第一世代:記号操作(1970-1990)、第二世代:身体性(1990-2010)の研究を辿り、それらの盲点をカバーしたプロジェクション・サイエンス研究が第三世代として展開され始めている。本書は学術誌『認知科学』のプロジェクション・サイエンス特集に大幅加筆し、書き下ろし原稿を加え再編集したものである。
人は世界から情報を受容し、それを世界へ投射=プロジェクションすることで独自の意味世界を構築している。この作用によって愛着、信仰、幻覚、フェティシズムなど人固有の心理現象が生まれる。心理学だけでなくAIやVRなどの情報科学、社会学や経営学分野の方々にも強く関連する研究といえる。本書では様々な場面における心と世界の関わりを詳細に解説している。
書誌情報
- 著者: 鈴木 宏昭, 田中 彰吾, 大住 倫弘, 信迫 悟志, 嶋田 総太郎, 森岡 周, 鳴海 拓志, 小野 哲雄, 中田 龍三郎, 川合 伸幸, 外山 紀子, 久保(川合) 南海子, 鳥居 修晃, 望月 登志子, 薬師神 玲子
- 発行日: 2020-09-17 (紙書籍版発行日: 2020-09-17)
- 最終更新日: 2020-09-17
- バージョン: 1.0.0
- ページ数: 256ページ(PDF版換算)
- 対応フォーマット: PDF, EPUB
- 出版社: 近代科学社
対象読者
認知科学,発達心理学,社会学,情報科学,経営学,神経科学,認知科学,哲学,現象学,投射,虚投射,異投射,AI,VR,ロボティクスリハビリテーション,モノマネ,二次創作,流行,宗教,フェティシズムに興味がある人
著者について
鈴木 宏昭
最終学歴 東京大学大学院教育学研究科博士後期課程満期退学.博士(教育学).現職 青山学院大学教育人間科学部教授.人間の思考について研究を重ねて,ついにプロジェクションにたどり着く.これを自分の研究人生の総仕上げと考えて研究を重ねている.日本認知科学会フェロー.主著に『教養としての認知科学』(東京大学出版会,2016),『類似と思考改訂版』(ちくま学芸文庫,2020).
田中 彰吾
東海大学現代教養センター教授.
大住 倫弘
畿央大学大学院健康科学研究科准教授.
信迫 悟志
畿央大学大学院健康科学研究科准教授.
嶋田 総太郎
明治大学理工学部教授.
森岡 周
畿央大学大学院健康科学研究科主任・教授,東京都立大学人間健康科学研究科客員教授.
鳴海 拓志
東京大学大学院情報理工学系研究科知能機械情報学専攻准教授.
小野 哲雄
北海道大学大学院情報科学研究院教授.
中田 龍三郎
北星学園大学社会福祉学部専任講師.
川合 伸幸
名古屋大学情報学研究科教授.中部大学創発学術院客員教授を兼務.
外山 紀子
早稲田大学人間科学学術院教授.
久保(川合) 南海子
愛知淑徳大学心理学部教授.
鳥居 修晃
東京大学名誉教授.
望月 登志子
日本女子大学名誉教授.
薬師神 玲子
青山学院大学教育人間科学部教授.
目次
プロジェクション・サイエンスへの誘い
1章 プロジェクション・サイエンスの目指すもの
- 1.1 はじめに
- 1.2 プロジェクションの必要性
- 1.3 プロジェクションの基本フレームワーク
- 1.4 プロジェクションの身体的基盤
- 1.5 プロジェクションのメカニズム
- 1.6 まとめと可能な反論
- 1.7 プロジェクション・サイエンスの構築に向けて
2章 ポスト身体性認知としてのプロジェクション概念
- 2.1 身体性認知とは何だったのか
- 2.2 身体性認知を支える仮説
- 2.3 身体性認知の心の見方と既存アプローチの限界
- 2.4 プロジェクション概念を導入する
- 2.5 プロジェクションの含意
3章 プロジェクション・サイエンスから痛みのリハビリテーションへ
- 3.1 はじめに
- 3.2 多感覚によって修飾される痛みの経験
- 3.3 プロジェクション・サイエンスの視点から痛みのリハビリテーションを再考する
- 3.4 プロジェクション・サイエンスを応用した痛みのリハビリテーションに向けて
4章 バーチャルリアリティによる身体の異投射が知覚・認知・行動に与える影響とその活用
- 4.1 プロジェクションによって生じる心の機能
- 4.2 異投射のツールとしてのバーチャルリアリティ技術・人間拡張技術79
- 4.3 異投射を活用したゴーストの理解から工学的アプローチによるゴーストの拡張へ
- 4.4 身体の異投射と身体所有感
- 4.5 身体の異投射の程度と知覚の変容
- 4.6 身体の異投射と認知・行動の変容
- 4.7 身体運動の変容が認知と行動に与える影響
- 4.8 ゴーストエンジニアリング:身体の異投射がもたらすゴースト変容の工学的活用
- 4.9 おわりに
5章 プロジェクション・サイエンスがHAI研究に理論的基盤を与える可能性
- 5.1 はじめに
- 5.2 プロジェクション・サイエンスにおける「投射」の分類
- 5.3 HAIにおける「異投射」:ITACOシステム
- 5.4 HAIにおける「虚投射」:身体投射システムと「サードマン現象」
- 5.5 「部屋」への投射:ITACO on the Roomと「事故物件」
- 5.6 プロジェクション・サイエンスはHAI研究に理論的な基盤を与えうるか?
6章 社会的な存在—他者—を投射する
- 6.1 はじめに
- 6.2 虚投射:誰もいないのに他者が投射される
- 6.3 異投射:異なる存在に特定の他者を投射する
- 6.4 人工物に他者を投射する
- 6.5 他者の異投射により心的感覚が変化する
- 6.6 “誰か”を投射する
- 6.7 “だれか”を投射することで食の社会的促進が生じる
- 6.8 まとめ
7章 魔術的な心からみえる虚投射・異投射の世界
- 7.1 内在的正義
- 7.2 死後の世界
- 7.3 セレブリティ伝染と汚染
- 7.4 プロジェクション・サイエンスの発展に向けて
8章 共有される異投射・虚投射:腐女子の二次創作,科学理論,モノマネを通じて
- 8.1 物語の派生とプロジェクション
- 8.2 腐女子の二次創作から考える二つのこと
- 8.3 物語の派生に関わる異投射と虚投射のメカニズム
- 8.4 投射を共有するコミュニティ
- 8.5 異投射や虚投射が共有されるダイナミズム
- 8.6 投射の共有で認識世界は豊かになる
- 8.7 コミュニティなしに共有される投射
- 8.8 おわりに
- 8.9 付録 腐女子の妄想内容の例『恋愛関係にあるアンパンマンとばいきんまん』
特別寄稿 開眼手術後における視・運動と定位活動
- S.1 まえがき:視覚におけるプロジェクションの問題と開眼手術後の視覚198
- S.2 Part 1: 問題の発端と展開
- S.3 色彩の知覚
- S.4 図領域の知覚:有無と方向の弁別
- S.5 2次元図形の形態弁別
- S.6 概要と考察
- S.7 Part 2: 開眼手術後における視対象の知覚と定位
- S.7.1 定位活動
- S.7.2 開眼手術後の形態識別と定位—開眼者KTの場合—
- S.7.3 平面図形の形態知覚と定位—開眼者KTの場合—
- S.7.4 開眼手術後における鏡映像の定位と認知—開眼者MOの場合—