SysML/UMLによるシステムエンジニアリング入門 モデリング・分析・設計
3,960円 (3,600円+税)
内容紹介
ソフトウェアの世界においては、不可視性や複雑性といった特性が一般的に認識されており、これらに起因する問題を解決するため、開発方法論について様々な議論および提案が行われてきた。しかしながら、「銀の弾丸などはない」と指摘されているように、特効薬となる解決方法は未だ見つかっておらず、プロジェクトの成功率は30%付近をさまよっている。
ところが、ソフトウェアの技術が登場するずっと以前から、巨大な建築物や造船、軍事の分野において、人間は大規模なシステムを作り上げることに成功してきた。数学をはじめとする諸科学の分野を発展させ応用することにより、設計と構築を多人数で行うことを可能にしているのだ。この分野がシステムエンジニアリングと呼ばれているものであり、既存のハードウェア、ソフトウェアをシステムの表現方法として統合していくため、共通の土台となる言語としてSysMLが生まれた。
ソフトウェア開発の業界ではUMLが一般化したが、海外でのプラント開発や製品システムの調達分野において、現在SysMLの採用が普及しつつある。調達側の変更要件に対し、システム上の変更影響度が即座に把握できず、見積が遅延するという問題が発生していることが、普及を加速している要因の一つとなっている。このような状況から、SysMLを用いたモデル化、成果物を整備できる人材の獲得が急務となっている。
絶え間なく技術を磨いている人は、難しくなりがちな内容を周囲にやさしく伝えられる技を持ちあわせている。一見、大規模で複雑なシステムを、新たな概念を導入および定義し、それを土台として新たな構造を構築することができる。初学者は、SysML/UMLの表記法に神経質になる必要はない。新たな言葉やモデリングの手段を身につけても、理解に苦しむ内容となったり、人によって解釈が分かれてしまうようでは、他人に正確に物事を伝えることができず、成果物は全く意味をなさない。重要なのは、全体像が掴めるようにシステムを捉え、設計要素に分解し、それらの関係をヌケモレ無く定義し、開発者が仕事に取り組めるように、首尾一貫したものとして共有できるかである。
本書は、システムエンジニアリングにおけるモデリング手順そのものをSysML/UMLを用いて説明している。また、単に表記法の説明に終始せず、SYSMODという、モデリングの手順に沿って説明している。実際の開発にSYSMODを適用する必要はないが、本書で取り上げた題材を読み進めながら、システム開発の流れを体験できることは、今後の開発を高度化する上でプラスになるだろう。
書誌情報
- 著者: ティム・ワイルキエンス(著), 今関 剛(訳・監訳), 貝瀬康利(訳)
- 発行日: 2023-03-01 (紙書籍版発行日: 2023-03-01)
- 最終更新日: 2023-03-01
- バージョン: 1.0.0
- ページ数: 254ページ(PDF版換算)
- 対応フォーマット: PDF
- 出版社: エスアイビー・アクセス
対象読者
これからモデリング言語SysMLを習得したいと考えている人。システムの記述、仕様策定、開発に携わる人。システムの分析と設計において現役の人。複雑なシステムと関わって仕事をしている人。システムエンジニアリングにおいて、SysMLまたはUMLを使いたいと考えている人。等々。
著者について
ティム・ワイルキエンス
ティム・ワイルキエンス(Tim Weilkiens)はドイツのコンサルタント会社oose Innovative Informatik GmbHのコンサルタント兼トレーナーである。彼はOMGのSysMLとUMLに関するワーキンググループの中核メンバーとして、SysML仕様を書いている。
今関 剛
株式会社イマテック代表取締役(http://www.imatec.co.jp)。
1991年より、大手電機メーカ向けのCAEシステムの構築、導入、組込みソフトウェア開発に従事。製造業における設計開発業務および製品品質の改善に貢献する。2000年より、製造業ドメインにて培った知見とソフトウェア開発技術をベースに、技術コンサルティングおよび組織内プロセス改善を推進してきた。現在は、製造業、金融および物流システムの再利用型開発による効率化を目指して技術と管理の両面から改善に取り組み、顧客事業の強化と成長に貢献している。アーキテクチャの改善では、DSM(Dependency Structure Matrix)による診断経験が豊富。プロダクトラインには2000年より着手し、セミナーおよび記事執筆、翻訳書などの普及活動を行っている。IEEE、SEA、EEBOF、SESSAME各会員、Embedded Software Guild幹事。
貝瀬康利
日本大学理工学部物理学科卒業。日立製作所にて10年程、EDAツール、カーナビシステム開発を経験した後、フリーに転身。組込み系を中心とするソフトウェアの開発およびコンサルティングを手がけている。主な実績は、カーナビのロケーション技術、医療画像処理の要素技術、カーナビや携帯電話開発の見える化、品質改善など。近年は、品質系のコンサルティングを中心に活動している。失敗学会会員。システム開発においては、Simple is best.を信条とする。それは単純なシンプルさではなく、数多くの複雑さを乗り越えた上に立つ「洗練されたシンプルさ」である。
目次
第1章 イントロダクション
- 1.1 はじめに
- 1.2 システムエンジニアリング
- 1.3 OMGのSysMLTMとUMLTM言語
- 1.4 本書の背景(コンテキスト)
第2章 実践的なSYSMODのアプローチ
- 2.1 事 例
- 2.2 要件の決定
- 2.3 システムコンテキストのモデリング
- 2.4 ユースケースのモデリング
- 2.5 ドメイン知識をモデリングする
- 2.6 用語集を作成する
- 2.7 ユースケースを実現する
- 2.8 注 釈
第3章 UML――統一モデリング言語
- 3.1 歴 史
- 3.2 構造と概念
- 3.3 クラス図
- 3.4 コンポジット構造図
- 3.5 ユースケース図
- 3.6 アクティビティ図
- 3.7 ステートマシン図
- 3.8 相互作用図
- 3.9 パッケージ図
- 3.10 他のモデル要素
第4章 SysML――システムモデリング言語
- 4.1 歴 史
- 4.2 構造と概念
- 4.3 要件図
- 4.4 アロケーション
- 4.5 ブロック図
- 4.6 パラメトリック図
- 4.7 ユースケース
- 4.8 アクティビティ図
- 4.9 ステートマシン図
- 4.10 相互作用図
- 4.11 一般的なモデリング要素
第5章 システムエンジニアリングのプロファイル ――SYSMOD
- 5.1 アクターのカテゴリ
- 5.2 技術領域に特化する要素
- 5.3 拡張要件
- 5.4 エッセンスアクティビティ
- 5.5 ドメインブロック
- 5.6 重み付き要件関係
- 5.7 連続的および二次的ユースケース
- 5.8 ステークホルダ
- 5.9 システムとサブシステム
- 5.10 システムコンテキスト要素
- 5.11 システムプロセス