オープンソース・クラウド基盤OpenStack入門 構築・利用方法から内部構造の理解まで
1,980円 (1,800円+税)
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内容紹介
本書は、OpenStackを利用したクラウド基盤の構築に興味がある方々に向けた書籍です。OpenStackは、今もなお日進月歩の開発が続いている、最先端のソフトウェアの1つです。その一方で、まとまった情報を日本語で入手することが難しく、入門のハードルがとても高い状態が続いていました。そこで、OpenStackを利用してクラウド基盤を構築しようと考えている方、あるいは、この分野に対する技術的な興味がある方に対して、少しでも入門のハードルを下げることができればと願い、本書の執筆に至りました。
本書では、解説の対象とするバージョンとして、7番目のリリースであるGrizzlyを採用しています。本書執筆時点では、すでに8番目のリリースであるHavanaが公開されており、出版時には、9番目のIcehouseも公開されていることと思います。そのような状況において、あえて、少し古いGrizzlyを採用したのには理由があります。仮想サーバー、仮想ネットワーク、仮想ストレージといったIaaS基盤に必要な機能が備わり、コンポーネントの役割分担が整理された最初のバージョンがGrizzlyだからです。今後のバージョンアップにおいて、さまざまな機能が追加されて、内部構造もより洗練されていくと予想されますが、基本的な設計概念は、Girzzlyから大きく逸脱することはないだろうと考えています。
現在のOpenStackは、IaaS基盤機能のみならず、PaaS基盤の機能も実装され始め、プロジェクト全体が更なる飛躍を見せようとしています。本書の執筆においては、その中でも、「変わらない基本的な部分をしっかりと解説する」ということをコンセプトとしました。OpenStackの原理や構造、根底にある考え方を学ぶことを重視し、細かな設定オプションなどの情報は、あえて少なくしています。バージョンやディストリビューションに依存する、コンフィグレーションに関連した内容よりも、OpenStackによるクラウド基盤を設計・構築する上での基礎となる、内部構造に重点をおいて解説しています。話を具体的にするために、RDOを利用した環境を前提として、プロセスの役割や構造を解説していますが、ここで得た知識は、他のプラットフォームやディストリビューションにおいても活かしていただけるはずです。
(「はじめに」より抜粋)
書誌情報
- 著者: 中井悦司, 中島倫明
- 発行日: 2014-06-03 (紙書籍版発行日: 2014-06-03)
- 最終更新日: 2014-06-03
- バージョン: 1.0.0
- ページ数: 208ページ(A4PDF版換算)
- 対応フォーマット: PDF, EPUB
- 出版社: KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
対象読者
本書は、業務システムとしてOpenStackを利用しようと考えている方々が、OpenStackの構造や考え方、特性について理解し、システムの導入・設計の助けとなる知識を得るための支援を目的としています。本書を読み進めていく上では、Linuxの基本的なコマンドや機能、そして、サーバー仮想化やネットワークといった幅広い要素技術の基礎知識が必要となります。
著者について
中井悦司
1971年4月大阪生まれ。ノーベル物理学賞を本気で夢見て、理論物理学の研究に没頭する学生時代、大学受験教育に情熱を傾ける予備校講師の頃、そして、華麗なる(?)転身を果たして、外資系ベンダでLinuxエンジニアを生業にするに至るまで、妙な縁が続いて、常にUnix/Linuxサーバと人生を共にする。最近は、Linuxディストリビュータに籍をおいて、企業システムでのLinux/OSSの活用促進に情熱を燃やす日々を過ごしながら、雑誌記事や書籍の執筆にも注力。
休日は、ロシア文学と哲学書を読みながら、ピアノジャズを楽しむはずが、今はなぜか、5才の愛娘と公園でたわむれる、近所で評判の「よいお父さん」。「世界平和」のために早めの帰宅を心がけるものの、こよなく愛する場末の飲み屋についつい立ち寄りがちな今日このごろ。
Linux/OSSによる業務アプリケーションの開発から、全国の小売店舗で稼働する10,000台以上のLinuxサーバの運用サポート、プライベート・クラウドの設計・構築まで、さまざまなプロジェクトを通して身につけた、「プロの心構え」を若手エンジニアに伝えるために苦心中。
OSSによるクラウド構築に魅了されたエンジニアが集まる「オープンクラウド・キャンパス」のメンバー。「GlusterFS」「OpenStack」など、クラウドに関わるオープンソースの啓蒙活動にも取組中。
中島倫明
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社勤務。1978年11月生まれ。現在はクラウドサービスの企画開発に従事し、OpenStack上で稼働するReal Application Centric Kernelを開発している。
幼少のころからコンピューターに慣れ親しみ、90年代前半には自宅で3Dゲームを嗜みポリゴン酔いに悩まされていた。修士課程において半導体の製造システムにかかわる基礎研究を行う中で、ハードを使いこなすためのソフトウェアに強く興味を持ち、ソフト方面の会社へ就職した。しかし半導体業界を離れたつもりが、入社から7年間は半導体製造業のシステムを担当することになり、ここでLinuxをはじめとするOSSに関する基礎技術を身につける。その後、サーバ仮想化・ストレージを中心としたサーバ統合・コンサルティング等の業務を経て現在へ至る。
2012年より日本OpenStackユーザ会会長を務めつつ、一般社団法人クラウド利用促進機構の技術アドバイザーとしてOpenStackとクラウド技術の普及・啓蒙・人材育成のため活動中。
目次
はじめに
謝辞
本書が対象としている読者
第1章 OpenStackのこれまで
- 1.1 クラウド基盤が求められる背景
- 1.1.1 クラウドサービスの広がり
- 1.1.2 IaaSがもたらす変化
- 1.1.3 IaaSを実現するソフトウェア
- 1.1.4 パブリッククラウドとプライベートクラウドの比較
- 1.2 OpenStackのあゆみ
- 1.2.1 OpenStackの誕生
- 1.2.2 OpenStackの進化
- 1.2.3 OpenStackの現在
- 1.3 OpenStackを支えるコミュニティ
- 1.4 コミュニティへのコントリビューション(貢献)
第2章 OpenStackクイックツアー
- 2.1 RDOとPackstack
- 2.1.1 RDOの概要
- 2.1.2 Packstackの利用方法
- 2.2 OpenStackの機能概要
- 2.2.1 仮想ネットワーク
- 2.2.2 仮想マシンインスタンス
- 2.2.3 ブロックボリューム
- 2.2.4 プロジェクトの管理機能
- 2.3 オールインワン構成でのインストール
- 2.3.1 前提環境とインストールの流れ
- 2.3.2 Fedora18のインストール
- 2.3.3 RDOのインストールと初期設定
- 2.4 ダッシュボードによる操作例
- 2.4.1 事前準備
- 2.4.2 仮想マシンインスタンスの起動
- 2.4.3 ブロックボリュームの利用
- 2.4.4 その他の機能
第3章 OpenStackのアーキテクチャー
- 3.1 OpenStackの構成要素と機能概要
- 3.1.1 開発プロジェクトの状態とその変化
- 3.1.2 コンポーネントの機能と役割
- 3.2 OpenStackを構成するプロセス群
- 3.2.1 Novaを構成するプロセス
- 3.2.2 Glanceを構成するプロセス
- 3.2.3 Keystoneを構成するプロセス
- 3.2.4 Horizonを構成するプロセス
- 3.2.5 Cinderを構成するプロセス
- 3.2.6 Neutronを構成するプロセス
- 3.2.7 Swiftの内部構造
第4章 マルチノード環境の構築と高度な利用方法
- 4.1 マルチノード環境の構成例
- 4.1.1 OpenStackを構成するサーバー群
- 4.1.2 スケーラビリティを考慮したサーバー配置
- 4.2 仮想マシンによる環境構築
- 4.2.1 ホストLinuxの導入
- 4.2.2 コントローラーノードの導入と初期設定
- 4.2.3 コンピュートノードの追加
- 4.3 コマンドラインツールの活用
- 4.3.1 Keystoneの操作
- 4.3.2 Glanceの操作
- 4.3.3 Neutronの操作
- 4.3.4 Novaの操作
- 4.3.5 Cinderの操作
- 4.4 APIライブラリの活用
- 4.4.1 APIライブラリの利用方法
- 4.4.2 Glanceクライアントの利用方法
- 4.4.3 Cinderクライアントの利用方法
- 4.4.4 Novaクライアントの利用方法
第5章 仮想ネットワークの詳細と今後の発展
- 5.1 Neutronの仮想ネットワーク機能
- 5.1.1 論理ネットワークモデルとプラグイン構造
- 5.1.2 Open vSwitchプラグインの概要
- 5.1.3 コマンドラインツールによる操作
- 5.2 クラウド・オーケストレーション
- 5.2.1 カスタマイズ・スクリプトによる自動構築
- 5.2.2 Heatによるクラウド・オーケストレーション
- 5.3 Tuskarによるクラウドの自動構築